北海道最北の村、猿払村。
ここには、高層ビルもファミレスも、ショッピングモールもありません。
都会に比べれば「ない」ものは数え切れないほど。
でも、そんな猿払の暮らしに、今あらためて価値を見出す人が増えています。
朝、窓を開けると聞こえてくるのは、波の音と鳥のさえずり。
車のクラクションや工事の騒音は聞こえません。
夜には星が空いっぱいに広がり、街灯に邪魔されることもなく、天の川まで見えることもあります。
「お隣さんは自然」とはよく言ったもので、家のすぐ裏にキツネやエゾジカが顔を出すことも珍しくありません。
「なにもない」と言われる猿払村ですが、実際に暮らしてみると、それがむしろ心地よさとして感じられます。
コンビニに行くのに車を走らせるのが当たり前。
でも、だからこそ無駄な買い物が減り、本当に必要なものを選ぶようになります。
時間にもゆとりが生まれ、自炊や家庭菜園など、暮らしを丁寧に営む人が多いのも特徴です。
また、猿払村には、誰かの顔が見える温もりがあります。
移住者の話をじっくり聞いてくれる人がいて、何か困ったことがあれば手を貸してくれる。
都会のような「便利さ」とは違う、人と人との近さと自然との距離感が、暮らしの安心感につながっています。
一方で、仕事や教育、子育てなど、現実的な課題もあります。
猿払村では、地域おこし協力隊や事業者による新たなチャレンジも進みつつあり、「この土地でどう働き、どう生きていくか」を真剣に考える人たちの姿も見られます。
村内の学校では、少人数制を生かしたきめ細やかな指導が行われており、子どもたちがのびのびと学べる環境が整いつつあります。
自然の中で暮らすというのは、ただ景色がきれいというだけではありません。
季節の移ろいを肌で感じ、目の前の環境にあわせて暮らし方を整えていくこと。
都会では見えにくかった「生きる」という実感を、日々の中で積み重ねていくことです。
もし今、「どこで」「どう生きるか」を少しでも見直してみたいと思っているなら、一度猿払村を訪れてみてください。
旅先ではなく、暮らす目線でこの村を歩いてみると、きっと心が静かに整っていくのを感じるはずです。
「なにもない」場所に、意外なほどたくさんの「ある」が見つかる――それが、猿払村での暮らしなのです。