11月、猿払村の空気は一段と冷たさを増し、海から吹く風も冬の匂いを含むようになります。
朝の空気を吸い込むと、鼻先がツンと痛むような感覚。晴れた日には澄んだ青空が広がりますが、その向こうにはいつ雪が降ってきてもおかしくない気配が漂います。
村に暮らす人々にとって、11月は「冬の入り口」
初雪を迎え、長い北国の季節を乗り越えるための支度が始まります。
猿払の初雪は、例年10月末から11月にかけてやってきます。
ほんの少し舞う程度の日もあれば、朝目覚めると一面が白く染まっていることも。
雪が積もると、子どもたちは待ちきれない様子で外に飛び出し、雪だるまを作ったり、真っ白な地面に寝転んで雪の天使を描いたりします。
その姿を見ていると、大人にとっては厳しい冬の始まりも、どこか温かく、楽しみに思えてきます。
一方で、大人たちは冬支度に余念がありません。
庭先や車庫では、夏タイヤから冬タイヤへの交換作業が行われます。
猿払の冬道は凍結や吹雪も多いため、スタッドレスタイヤは必須。
家の軒先には雪かき用のスコップやスノーダンプが並び、除雪機の整備をする光景も見られます。
灯油のタンクを満タンにし、ストーブの試運転を済ませておくことも大切な冬準備。
冷たい風が吹き込む前に、窓や玄関のすきま風を防ぐための養生も欠かせません。
これらの作業は一見大変そうに思えますが、村の人にとっては冬を安心して迎えるための「年中行事」のようなもの。
冬支度が整うと、気持ちも引き締まり、安心感が広がります。
11月の村の風景には、冬に備える暮らしの知恵が随所に見られます。
農作業も漁業も一区切りがつき、村全体が「これからの厳しい季節に備える時間」に切り替わるのです。
また、日常生活の小さな場面にも冬の入り口を感じます。
スーパーやコンビニにはおでん用の具材や鍋の材料が並び始め、家庭では温かい食卓が増えていきます。
冷えた体を温めるシチューや鍋、鮭と野菜を豪快に焼くちゃんちゃん焼きは、まさに北国ならではの味覚。
窓の外でしんしんと雪が舞うのを眺めながら、家族で囲む鍋の湯気は、寒さの中にある暮らしの温もりを感じさせてくれます。
移住者や新しく村に来た人にとっては、この時期の冬支度は驚きの連続かもしれません。
雪国に住むということは、ただ寒さに耐えることではなく、寒さと共に暮らす知恵を積み重ねていくこと。
タイヤ交換のタイミングや雪かきの道具の使い方、灯油の備蓄量など、暮らしの中で学ぶことが多くあります。
そうした経験を通じて、初めて「北国で生きる」という実感が芽生えていくのかもしれません。
初雪は、厳しい冬の始まりであると同時に、村の暮らしの節目を告げる合図です。
白い雪が降り積もるたびに、猿払の風景は一層美しく、凛とした姿を見せてくれます。
11月の猿払は、冬の厳しさと美しさを同時に感じられる特別な季節。
初雪とともに始まる冬支度は、村で暮らす人々にとって大切な日常の一部なのです。
ぜひ冬の猿払も訪れてみませんか?