冬を迎え入れ、雪と灯りが寄りそう――猿払の12月

12月、猿払村の空気は一段と澄み、海からの風は頬を刺す冷たさの中にもどこか凛とした匂いを含むようになります。
陽の短さがはっきりと感じられるこの月は、長い冬を暮らしのリズムに迎え入れる時期。
外の景色は静けさを増し、家の中ではストーブの炎がいつもより頼もしく見えてきます。

村の暮らしは、冬をやり過ごすのではなく、冬と一緒に進みます。
家々では、すきま風を防ぐために窓辺の養生を見直し、厚手のカーテンを整え、加湿の準備をします。
灯油タンクは早めに満たし、ストーブの試運転で温かさの出方を確かめ、玄関脇には雪かき用のスコップとスノーダンプが並び、除雪機はうなりの調子を確かめられて出番を待ちます。
車はスタッドレスタイヤに履き替え、ワイパーのゴムやウォッシャー液も冬仕様へ。

雪が降り続く日には、村じゅうが少しずつ同じ動きをします。
玄関を開けると白い世界、まずはひと押し、ふた押しと雪を寄せ、道筋をつくる。
音が吸われるような朝の静けさの中で、スコップの先が雪を切る音だけが響きます。

除雪車が通る頃には空が明るみ、道の端に新しい雪の壁が出来る。
そんな繰り返しの中でも、子どもたちは雪の深さをものともせず外へ飛び出し、長靴の跡を連ね、転んでは笑い、手袋を雪で真っ白にしながら帰ってきます。
濡れた帽子や手袋の定位置を決め、ストーブのそばに干しておくことも冬の日常の一部です。

食卓にも、12月ならではの温かさが増えます。
猿払といえばやっぱりホタテ。
軽く焼いてしょうゆを一滴、ふっと立つ香りにごはんが進みます。
酒蒸しは長ねぎと生姜がよく合い、味噌仕立ての鍋に入れれば体の芯から温まります。

仕事も家事も年内の区切りが見えてくると、気持ちの中に「今年をたたむ」時間が生まれます。
使い切れなかった調味料を小さな料理に活かしてみたり、冬のあいだ続けたい習慣を一つだけ決めてみたり。
ごみ収集日や営業日、年末年始の予定をカレンダーに書き込み、車の置き場所や雪捨て場を家族で確認すれば、忙しさの波も越えやすくなります。
暮らしの段取りを整えることは、同時に心の段取りを整えることでもあるのだと、この月は教えてくれます。

夜、外へ出て深呼吸をひとつ。
息は白く、村の灯りが雪明かりにやわらいで見えます。
寒さは厳しいのに、不思議と静けさが心に降り積もる。
そういう瞬間のために、私たちはタイヤを替え、雪かきの道具を揃え、台所で鍋を温めてきたのかもしれません。
12月の猿払村は、厳しさと温もりが同じテーブルに並ぶ季節。
今日できる支度をひとつだけ済ませたら、ストーブの前で温かい飲み物を。
窓の外に舞う雪を眺めながら、新しい年を迎える準備が静かに進んでいきます。

ぜひ雪の猿払も訪れてみませんか?