北海道最北の地、猿払村。
この村にやってくる夏は、6月から8月下旬までのほんのわずかな時間です。
けれど、その短い夏は、季節の恵みと命のエネルギーに満ちた、とびきり濃密な時間でもあります。
6月、ようやく雪解けが進み、大地が緑に染まり始めるころ。
森では野鳥がさえずり、牧草地にはシカやキツネの姿も見られ、まるで生命が一斉に目を覚ますよう。
風はまだ少し冷たいけれど、空には夏の気配が漂い始めます。
この時期、猿払の暮らしにも変化が訪れます。
農業や漁業に従事する人たちにとっては、まさに一年で最も忙しい季節。
ホタテの水揚げや稚貝の育成、牧草の収穫など、自然とともに働く日々が続きます。
外仕事の多い村の人たちにとって、夏は「動く季節」です。
一方で、日が長くなるこの時期は、仕事が終わってからも楽しみがたくさん。
家族で外に出て、庭でのバーベキューや焚き火を楽しむ人もいれば、虫かごを手にした子どもたちが駆けまわる姿も見かけます。
村内を少し車で走れば、海沿いの道から広がるオホーツクブルーや、真っ赤に染まる夕日を見ることも。
特に風のない日の夕暮れは格別で、その日しか見ることができない景色に出会えることもあります。
都市から移住してきた人の中には、「猿払の夏は、何もないからこそ贅沢」と語る方もいます。
冷房がいらないほど涼しく、湿気も少なく、夜には虫の声だけが響く静けさ。
夏のストレスから解放され、自然の中で“ただ過ごす”ことができる——そんな感覚が、多くの移住者を魅了しているのかもしれません。
6月〜8月は、まさに「猿払らしさ」を全身で感じられる季節。
観光で訪れるのももちろん良いですが、もし猿払村への移住や二拠点暮らしを考えているなら、この季節に一度足を運んでみてください。
ただ空を見上げて深呼吸をするだけで、ここにしかない時間の流れを感じられるはずです。